海上自衛隊の階級って、星が3つだと偉いの?
艦長と司令、どっちが民間企業の社長なの?
ニュースや映画で目にする海上自衛隊の階級。
しかし、その「金色の線」や「桜のマーク」が持つ本当の重み。
私は、学校を卒業後に海上自衛隊に入隊し、定年まで勤務しました。
私自身の経歴は、ここでご紹介できるようなものではありませんが、18年間の艦艇、17年間の陸上(航空)勤務してきました。
そこで見聞きしたのは、 ” 自衛隊(海上)の階級は、ただの上下関係ではなく、時として命を預かる責任の重さそのもの ” と思うことがありました。
この記事では、海上自衛隊の階級についてご紹介します。
読者の皆様がイメージしやすいよう、「民間企業の役職(社長・部長・課長)」と比較しながら、給料、昇進スピードなどの例についてお届けします。
ぜひ最後までお読みいただき、この記事が皆様にとって価値ある情報となれば幸いです。
海上自衛隊の階級 vs 民間企業役職 比較表
海上自衛隊の階級を、一般的な民間企業とを比較してみました。
| 区分 | 階級 | 民間企業での相当役職 | 現場でのリアルな立ち位置 |
|---|---|---|---|
| 将官 (経営層) | 海将 | 社長・CEO グループ統括本部長 | 数万人を動かすトップ。その決断は国家の安全保障に直結する。雲の上の存在。 |
| 海将補 | 専務・常務取締役 本部長 | 地方総監部の幕僚長など、組織の実質的な運営責任者。将来のトップ候補。 | |
| 佐官 (管理職) | 1等海佐 | 執行役員・支店長 工場長 | イージス艦の艦長クラス。一つの「城(艦や基地)」の全責任を負う王様。 |
| 2等海佐 | 部長 次長 | 大型艦の副長や、司令部の班長。実務部隊を束ねるキーマン。 | |
| 3等海佐 | 課長 営業所長 | 小型艦の艦長や、護衛艦の砲雷長など。現場指揮官として最も脂が乗っている時期。 | |
| 尉官 (初級幹部) | 1等海尉 | 課長代理 係長 | 分隊長として部下(曹士)を直接指揮する。現場と上層部の板挟みに遭う中間管理職。 |
| 2等海尉 | 主任 プロジェクトリーダー | 実務経験を積み、現場の要領を完全に把握している若手リーダー。 | |
| 3等海尉 | 幹部候補生 (将来のリーダー) | 大学卒業後すぐの幹部。階級は高いが、現場のベテラン曹長に仕事を教わる立場。 | |
| 准尉 | 准海尉 | 技術顧問 マイスター | 現場を知り尽くした長老。 |
| 曹 (現場監督) | 海曹長 1等海曹 | 現場監督 職長 | 現場の実質的な長。彼らが動かないと艦は動かない。 |
| 2等海曹 | 班長 | もっとも激務なポジション。上(曹長・1曹)からの圧力と下(3曹・士)の指導に追われる。 | |
| 3等海曹 | チームリーダー | 「海士」から昇任し、正社員として認められた階級。ここからが本当の自衛官人生。 | |
| 士 (一般社員) | 海士長 | 一般社員 | 一通りの仕事はできる戦力。若手の中では兄貴分。 |
| 1・2等海士 | 新入社員 見習い | 修行期間。掃除、洗濯、雑用を通じて「艦(船)乗り」の基礎を体に叩き込む。 |
階級章

「1等海佐」は中小企業の社長よりも重い?階級ごとのリアルな権限
比較表を見ていただきましたが、それぞれの階級が持つ「空気感」や「凄み」を深掘りします。
イージス艦艦長(1等海佐)の孤独と絶対権限

民間企業で言えば「支店長」や「工場長」クラスと書きましたが、海の上ではその権限は別格です。
洋上に出れば、そこは日本から離れ何か事態が生起(起これば)すれば、ミサイルを発射するか否かの判断を数秒で迫られるプレッシャーは、一般企業の役員でもなかなか味わえないのではないでしょうか。
艦長の命令は絶対であり、部下300名の命だけでなく、イージスシステムを全幅活用して日本本土の防衛にあたる。
艦長は、食事中でも入浴中でも、片時も「指揮官」の顔を崩しません。
実は現場を支配しているのは「先任伍長(曹長・1曹)」
組織図の上ではもちろん幹部が偉いのですが、現場には「裏の序列」が存在します。
それが海曹の中から選ばれた ” 先任伍長(せんにんごちょう) ” という役職があります。

これは曹士を代表し、まとめ役的な存在でもあります。
私が若手海曹だった頃、着任したばかりの若い幹部(3等海尉)が、現場のことを知らずにトンチンカンな命令を出したことがありました。
その時、先任伍長が静かに、しかし断固として「その命令は現場では実行できません」と意見具申することを目にしました。
民間企業で言えば、東大卒の新入社員キャリア官僚(幹部)に対して、高卒叩き上げの工場の長(海曹)が現場の現実を説く構図です。
給料と階級の密接な関係と「手当」
「自衛官は公務員だから給料が安い」と言われています。
実は、同じ階級でも勤務場所によって違いあります。
階級が上がると「号俸」の天井がなくなる
自衛隊の給料は「階級」と「号俸(勤続年数などで上がる)」の掛け算で決まります。
しかし、下の階級のままだと、ある程度の年齢で給料の伸びが止まってしまう(頭打ちになる)のです。
今になってみれば、必死に昇任試験の勉強をすれば良かった💦 と思うことも・・・。
生涯賃金には数千万円の差が出ます。
これは家のローンを組む時や、子供を大学に行かせる時に、痛いほど実感する現実です。
最強のブーストアイテム「乗組手当」
それが「乗組(搭乗員)手当」です。
基本給の約33%〜45.5%(階級や配置による)が上乗せされます。
例えば、陸上勤務の2等海曹の手取りが25万円だとしたら、同じ階級でも艦艇勤務だと35万円近くになることもあります。
私が独身の時代に艦艇に乗艦していた頃は、出港が続くと使う暇がないため、通帳の残高が勝手に増えていく感覚がありました。
若い隊員がアルファードやハリアーなどに乗れるのは、この手当のかも知れませんね。
ただし、その代償として、家族との時間やプライベートな空間は犠牲になります。
まさに「自由と引き換えの対価」と言えるでしょう。
昇進のリアル:ノンキャリア(曹士)とキャリア(幹部)の壁
入隊区分による昇進スピードの違いも、民間企業の「総合職」と「一般職」以上に明確です。

ノンキャリア(曹候補生・一般曹候補生)の出世道
高卒などで入隊し、曹士としてキャリアを積む場合、目指すべきゴールは「海曹長(准海尉)」です。
約35年勤務して、同期の中で幹部になるのは一握り。
ほとんどは曹長〜1曹で定年を迎えます。
しかし、道はそれだけではありません。
部内幹部候補生試験(通称:B幹)に合格すれば、途中から幹部コースへ転換できます。
私がお世話になった方の中に、3等海士(中学を卒業して入隊(現在、この制度は廃止。)として入隊。
その後、幹部へ昇任して最終的に現役1等海佐まで昇任するような方がいました。
昭和30年代に入隊した私の叔父の同期の方には、2等海士として入隊(退職)して大学へ。
その後、海上自衛隊の幹部候補生へ再入隊して護衛艦隊司令官(海将)を歴任。
そのような方は、現場の苦労を知っていますが幹部として厳しい勤務環境で過ごしたことで、仕事面ではとても厳しくもありました。
キャリア(防衛大学校・一般大幹部候補生)の高速エレベーター

自衛隊に限らずですが、防衛大学校などを卒業して幹部候補生として入隊した場合、スピード感が違います。
20代で2等海尉(主任クラス)、30代前半で3等海佐(課長クラス)、40代で1等海佐(支店長クラス)と、猛スピードで駆け上がっていきます。
傍から見るとエリートコースで羨ましく見えますが、そのプレッシャーは尋常ではないと思います。
1年から2年おきに全国転勤を繰り返し、常に新しい部署で結果を出さなければならない。
キャリアには、私たちのような一般隊員には分からない苦悩があることでしょう。
まとめ:階級よりも大切な「プロとしての責任」
ここまで、海上自衛隊の階級を民間企業の役職と比較しながら説明しました。
民間企業の社長 = 海将
現場の工場長 = 海曹長・1等海曹
会社や組織の中で働く皆様と同じように、自衛隊員もまた、一人ひとりがその持ち場で、それぞれの責任を必死に全うしています。
艦長がどんなに立派な号令をかけても、エンジンの整備をしてくれる海曹がいなければ艦(船)は動きません。
若手の海士が作る温かい食事がなければ、幹部も冷静な判断を下すことはできません。
大きな艦(船)が海を渡れるのは、誰か一人が偉いからではなく、乗員全員がそれぞれの場所でプロフェッショナルとしての仕事を果たしているからです。
もし今後、ニュースや港で海上自衛官を見かけることがあれば、
その肩にある階級章の奥に、皆様と同じように日々悩み、汗を流して働いている「一人の人間」としての姿を重ねていただければ、元隊員としてこれほどうれしいことはありません。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。


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